更年期の症状の改善に効果的な食品や栄養素をご紹介

この記事の監修者

寺内公一

寺内 公一

東京医科歯科大学 医学博士

経歴

1994年 東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院、国保旭中央病院、都立大塚病院産婦人科にて研修。
2003年 医学博士
2005年 米国エモリー大学リサーチフェロー
2012年 東京医科歯科大学大学院医師学総合研究科女性健康医学講座准教授
2020年 東京医科歯科大学 茨城県地域産婦人科学講座 教授

40代から50代後半の女性に現れる更年期症状ですが、その症状や程度はさまざまです。症状をほとんど感じずに済む方もいれば、生活に支障が出てしまうほど症状が重い方もいます。

更年期の間は生活習慣を見直し、整える必要があります。特に食事はバランスを考えながら、摂るべき栄養を積極的に摂取していく必要があります。

本記事では「更年期の食事」をテーマに、更年期におすすめな食品や栄養素のご紹介、逆に控えた方がよい食品について解説します。

この記事でわかること

  • 更年期症状について
  • 更年期におすすめな食べ物について
  • 更年期に気をつけた方がよい食べ物について

更年期とは

更年期とは閉経の前後10年間と定義されており、40代から50代後半までの女性に更年期症状が現れる可能性があります。更年期症状の原因は閉経を迎えるにあたり、女性ホルモンの低下とゆらぎが生じることで、自律神経などの働きに影響を及ぼすためです。

また、更年期症状は個人差が非常にあり、症状・程度・期間など必ずしも同じ症状が見られるとは限りません。さらに、日によって体調に変動がある場合もあります。それぞれの体調に合わせたケアが必要です。

更年期に起こりやすい症状

精神的不調を訴える女性

更年期に主に現れる三つの症状には以下が挙げられます。

  • ほてり・ほっとフラッシュ:ほてりを始めとする「カッと顔が熱くなるような」症状
  • 手足の冷え:季節に関わらず手足が冷たく動かしにくいなど
  • イライラ・不安感などの精神症状:些細なことが気になってしまったり、漠然とした不安感を感じるなど

更年期は体のバランスが大きくゆらぎ、不安定になる時期です。戸惑うこともあるかと思いますが、落ち着いてご自分の体調とゆっくり向き合いましょう

更年期症状を和らげる効果がある食品

大豆

ここでは、更年期症状を和らげる効果が報告されている食品を紹介していきます。

なぜその食品が更年期症状に良いとされているのかも合わせて解説していくので、更年期症状にお悩みの方は参考にしてみてください。

たんぱく質食品

更年期には「たんぱく質食品」の摂取がおすすめです。タンパク質は筋肉や血管、骨など体をつくったり、体内で消費するアミノ酸の原料になる必要な栄養素です。

特に更年期の女性は年を重ねるにつれ筋肉量が低下し、閉経後になると骨密度が低下し1)骨粗しょう症を発症する方も少なくありません。筋肉量と骨密度が低下すると疲れやすくなったり、ケガをしやすくなるので、適切な量のたんぱく質を摂取することが大切です。

また、睡眠スイッチを入れるメラトニンは、アミノ酸の一種であるトリプトファンから作られます。たんぱく質は睡眠の質にも影響を与える栄養素といえるのです。

【タンパク質の情報】

摂取の目安 体重×約1g(50kgの方では約50g)
栄養素を多く含む食品 肉・魚・卵・豆類など
補給方法 プロテインを取り入れる

大豆食品

更年期の女性には「大豆食品」もおすすめです。大豆食品はたんぱく質も豊富で、さらに女性ホルモンの一種であるエストロゲンに似た作用を持つイソフラボンが多く含まれます

イソフラボンは女性の体調を整え、血中コレステロール値の低下や更年期に現れるほてりに効果があるという報告もあります2)。

摂取量の目安は、「大体1日に70~75mg程度」とされており、食品換算で「豆腐:約1.8丁程度」です。大豆食品の食べすぎはイソフラボンの過剰摂取の原因となり、返って女性ホルモンのバランスを崩してしまう恐れがあるため、体によい食べ物だとしても摂取量には気をつけましょう。

【大豆食品の情報】

摂取の目安 上限値70~75 mg/日(目安:豆腐1丁で約40mg・豆乳200mlで約40mg)
栄養素を多く含む食品 豆腐・豆乳・納豆など
補給方法 サプリメントを取り入れる

全粒穀物

更年期にはイネ科の植物の食用種子を用いた「全粒穀物」もおすすめです。全粒穀物とは、果皮、種皮、胚、胚乳表層部などの部位が除去されていない穀物です。

全粒穀物には食物繊維が豊富に含まれています。更年期症状のひとつであるほてりは血糖値の急激な低下で現れやすくなるという報告がありますが3)、食物繊維は血糖値の変動を緩やかにする働きがあるため、更年期の方にはぜひ取り入れていただきたい食品です。

白米や砂糖など精製された糖質を摂取すると血糖値が急激に上がりやすくなりますが、全粒穀物は含まれる食物繊維や精製される前の殻がクッションとなり消化吸収を緩やかにしてくれます。

さらに、全粒穀物を習慣的に摂取している閉経女性は、糖尿病や心疾患の発症リスクが低かったとの報告もあります4)。

【全粒穀物の情報】

摂取の目安
(食物繊維)
男性21g以上、女性18g以上(目安:ゲンマイ100gあたり3g)
栄養素を多く含む食品 オオムギ・ゲンマイ・キビ・トウモロコシ
補給方法 白米を玄米ごはんに置き換える

食物繊維・抗酸化物質

更年期には食物繊維や抗酸化物質を積極的に取り入れることも重要です。前の章でも解説しましたが、食物繊維は急激な血糖値の上昇を抑える働きがある他に、便通をよくする効果も期待できます

一方、抗酸化物質は体を酸化ストレスから守り、血管や皮膚の老化を予防する効果があります。食物繊維や抗酸化物質は野菜・果物に多く含まれていますが、これらの食品を習慣的に摂取している女性は、食べていない女性に比べ、ほてりが減少したというデータが報告されています6)。

また、加工食品に偏らず、植物性食品(全粒穀物、野菜、果物)の摂取をしている女性は、うつやストレスリスクが低かったという報告もあります7)。

【食物繊維・抗酸化物質の情報】

摂取の目安
(食物繊維・抗酸化物質)
男性21g以上、女性18g以上・目安は設けられていない
栄養素を多く含む食品 野菜・果物・ワイン
補給方法 食事の一品として追加する。抗酸化物質の一種であるポリフェノールなどのサプリメントを取り入れる。

オメガ3脂肪酸の含まれる食品

更年期には「オメガ3脂肪酸」の摂取もおすすめです。オメガ3脂肪酸は脂肪酸の一種で、血液をサラサラにしたり、免疫機構を整えアレルギー反応を抑える効果があるとされています

また、オメガ3脂肪酸を補給したところ、ほてりの頻度が低下したという研究結果が報告されています5)。しかし、摂りすぎは吐き気や下痢、血が止まりにくくなる原因になります。摂取目安範囲内で適度に取り入れましょう。

【オメガ3脂肪酸の情報】

摂取の目安 男性の場合2.0g~2.2g、成人女性で1.6g~2.0g
(目安:サンマ100gあたりDHAが1600mg・EPA850mg)
栄養素を多く含む食品 青魚(EPA・DHA)、なたね・えごま(α-リノレン酸)
補給方法 サプリメントを取り入れる。

更年期の女性が注意すべき食品

更年期の女性が注意すべき、食べ過ぎは控えた方がよい食品についてご紹介します。それぞれの食品がなぜ食べ過ぎてはいけないのか、その理由も合わせて解説しますので、現在のご自分の食生活を振り返りながら読んでみてください。

砂糖・精製された糖質

砂糖などの精製された糖質は、急激な血糖値の上昇させる原因になるため、注意が必要です。

ほてりなどの更年期症状は、血糖値変動が大きくなったり、内臓脂肪が多いことでインスリン(血糖値を調節するホルモン)の働きが弱まることで起こりやすくなります6)8)。 そのため、血糖値を急激に上げてしまう、砂糖・精製された糖質(白米や小麦粉など)の過剰摂取には注意が必要です。

白米を全粒穀物に置き換えたり、糖類の多い加工食品やジュース類を控えて、果物を食べるようにしたりするとよいです。ただし、バナナやマンゴーなど糖分の多い果物は血糖値が上がりやすくなるため、食べすぎには気をつけましょう。

アルコール・カフェイン

更年期だけに限りませんが、アルコール・カフェインの摂取量に気をつけましょう。閉経期の女性を対象にした研究で、アルコール・カフェインを摂取している人は、更年期にほてりをより強く感じやすいことが報告されています9)10)。

また、アルコール・カフェインは睡眠の質を低下させてしまうことや、末端の冷えの原因にもなる恐れがあります。更年期の症状として眠りが浅い方や手足の冷えが気になっている方は、特にアルコール・カフェインの摂取を控えることをおすすめします。

高脂肪食品

脂質の多い高脂肪食品の摂取量に気をつける必要があります

例えば、

  • 脂身の多い肉
  • 揚げ物
  • 乳製品
  • スナック菓子、洋菓子

などは脂質が多く含まれているため、過剰摂取には注意が必要です。

更年期になるとコレステロールなどを調整しているエストロゲンの分泌が減少するため、脂質異常症の発症リスクが上がります。

脂質異常症になると、血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞といった疾患に発展するリスクも高くなります。脂質自体は栄養素として欠かせないものではありますが、摂りすぎには注意しましょう。

高塩分食品

塩分の摂りすぎも要注意です。例えば、

  • 塩辛
  • つけもの
  • 味噌汁

などの塩分を多く含む食品は気をつけましょう。高塩分食品を摂取しているほど骨密度が低下しており、ナトリウム摂取量が2,000mg/日以上になると、閉経後の女性の骨粗しょう症のリスクが増加するという報告があります11)。

また別の研究報告では、塩分控えめ、カルシウム多めの野菜や果物、赤身肉を中心とした健康的な食事を摂ることで閉経後の女性の気分が改善されたという報告があります2)。減塩食品を選んだり、気持ち味付けを普段よりも薄めにするなど、ちょっとした工夫で摂取量を減らすことができます。ぜひ日頃の食生活を一度見直してみてください。

以下の記事も合わせて読む
更年期と骨密度の関係について知りたい方はこちら

漢方薬を取り入れることで諸症状の緩和に繋がることも

つらい更年期症状には漢方薬の服用も有効です。漢方薬は、その人の体質や生活習慣など様々なことを総合的に見直し、体の内側から緩やかに症状を改善していくものです。漢方薬には様々なものがありますが、更年期症状に有効な漢方薬は以下のとおりです。

  • 加味逍遙散(カミショウヨウサン):抑うつやイライラ、ほてり、のぼせなど
  • 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):冷えや貧血の傾向がある
  • 桂枝茯苓丸(キエシブクリョウガン):のぼせや頭痛、下腹部痛などがある

更年期の症状には個人差があり、症状にあった漢方薬の服用が必要です。漢方薬はゆっくり症状を改善してくれるので、生活に取り入れやすいため、すこしずつでも症状を軽くしたいといった方はぜひ医師や薬剤師に相談してみてください。

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まとめ

今回は「更年期の食事」をテーマに、おすすめな食べ物や栄養素、逆に避けた方がよい食べ物について解説しました。

食事は日々の体をつくる大切な要素です。食べたものによってご自分の体を構成するものが決まるといっても過言ではありません。

【更年期におすすめの食品】

  • タンパク質:肉・魚・卵など
  • 大豆食品:豆腐・豆乳など
  • 全粒穀物:ゲンマイ・オオムギなど
  • オメガ3脂肪酸:えごま・青魚など
  • 食物繊維:野菜・果物・海藻など

今回の記事をきっかけにして、ぜひご自分の食生活を見直してみてください。

また更年期に自分が差し掛かっているのか気になるという場合にはcanvasのホルモン検査キットがおすすめです。

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参考論文

1) M L Maltais.Changes in muscle mass and strength after menopause.2009 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19949277/

2) Mark Messina.Soy foods, isoflavones, and the health of postmenopausal women.2014 https://academic.oup.com/ajcn/article/100/suppl_1/423S/4576564

3) Sharon Dormire.The Effect of Dietary Intake on Hot Flashes in Menopausal Women.2007 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2765999/

4) D R Jacobs, Jr.Whole-grain intake may reduce the risk of ischemic heart disease death in postmenopausal women: the Iowa Women’s Health Study.1998 https://academic.oup.com/ajcn/article/68/2/248/4648726

5) Lucas, Michel.Effects of ethyl-eicosapentaenoic acid omega-3 fatty acid supplementation on hot flashes and quality of life among middle-aged women.2009 https://journals.lww.com/menopausejournal/Abstract/2009/16020/Effects_of_ethyl_eicosapentaenoic_acid_omega_3.22.aspx

6) Candyce H. Kroenke.Effects of a dietary intervention and weight change on vasomotor symptoms in the Women’s Health Initiative.2013 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3428489/

7) Liu Zhao-min PhD.Associations between dietary patterns and psychological factors: a cross-sectional study among Chinese postmenopausal women.2016 https://journals.lww.com/menopausejournal/Abstract/2016/12000/Associations_between_dietary_patterns_and.7.aspx

8) Suk Woo Lee.Association between menopausal symptoms and metabolic syndrome in postmenopausal women.2016 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21853251/

9) Jay Kandiah.An exploratory study on perceived relationship of alcohol, caffeine, and physical activity on hot flashes in menopausal women.2010 https://www.scirp.org/journal/PaperInformation.aspx?PaperID=2617

10) Faubion,Stephanie.Caffeine and menopausal symptoms.2015 https://journals.lww.com/menopausejournal/Abstract/2015/02000/Caffeine_and_menopausal_symptoms__what_is_the.7.aspx

11) S-J Kwon.High dietary sodium intake is associated with low bone mass in postmenopausal women: Korea National Health and Nutrition Examination Survey, 2008-2011.2017 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28074252/

12) Susan Jane Torres.A moderate-sodium DASH-type diet improves mood in postmenopausal women.2011 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22480799/

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